二度とジャーナリストには戻れない・戻さない
2009-01-14


調書漏えい 草薙さん「情報源は被告医師」 奈良地裁公判
1月14日12時33分配信 毎日新聞
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「情報源の秘匿」

 これは取材をする上で、絶対にジャーナリストが守らなければならないことだ。それは社会正義云々という問題だけでなく「情報」を守る上でも特に必要な事だからだ。

 何らかの情報が社会に出回った瞬間、その情報によって不利益をこうむる人がいる。これは見方を変えると、「情報を出した人がいる」から「不利益を受ける人」が生まれるという事だ。

 では、この時、不利益をこうむった人はどう行動するだろうか?

 その一つとして、原因である「情報を出した人」に対し報復行動に出る可能性がある事は容易に予想できるだろう。

 このような状況で、情報を持っている人は自らの危険を顧みず情報提供してくれるだろうか?
 萎縮して情報を出さなくなる人の方が多くなるという事は、自然と理解できるだろう。

 したがって、情報保有者が情報を安心して提供するためには、まず最優先で情報保有者の安全が確保されるように配慮する必要がある。

 これが「情報源の秘匿」が求められている根本理由だ。
 
 実はこれは、報道にだけ与えられた特権ではない。
 報道以外でも「証人保護プログラム」などのように、ある犯罪に関し犯罪者が情報提供者を害する事が無いようにする制度もある。 

 この「情報源の秘匿」とは、『特権・権利』などではなく、「正確な情報を正確に提供してもらうため」に『必要な制度・義務』だといえるだろう。

 したがって、これは「権利」として自由に行使できる(または行使しないこともできる)ものではなく、本来「義務」として絶対に死守しなければいけない性質のものだ。
 国家や他の権力(武力)によって脅迫その他の行為があっても、原則「守りぬく努力」をしなければいけない義務だ。

 国家(ないし大きな力を持った組織)が、力によって脅せば簡単に情報源の秘匿を放棄する。
 その程度の人に、今後、情報を提供する人は出てくるだろうか?
 はっきりいって、期待できないと思う。

 危なくなったら、すぐ自分を売るような人に誰が情報を出すだろうか?
 まず、よほどのお人よし以外いないだろう。

 だから、この「義務」を放棄した時点で、この草薙さんは「二度と情報を扱わえない」。ジャーナリストとしては死んだと言っていいだろう。

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 さて、問題なのは今後「その他のマスコミ」の対応。

 これを、「国が悪い・裁判所が悪い」などといい、草薙さんを擁護するような事があれば、その時点でマスコミの信頼度も地に落ちる。

 確かに、強権的に動いた裁判所自身にも問題はある。
 だがそれ以上に、「たかだか裁判所から言われた程度」で自分の情報源を国に売ってしまうような人間を「報道」として認めたら、その時点で「自分の首を絞める」事になる。

 「ちょっと国から言われた程度で、情報源を国に売る」
 それを『仕方がない』と言い放つような人は、「自分がその立場になった時」同じように「自分の情報源を売り渡す」という事を表明する事と同じでしかないのだから。

 そうなった時、誰がそんなジャーナリストに情報を渡すだろうか。

 今こそ、ジャーナリスト・報道は「草薙さん」のような事をしないように、草薙さんを全面否定しなければいけないだろう。

 もし、草薙さんを擁護する。それは「報道」の自殺に他ならないのだが。

 この本の出版社も含め、報道関係、情報関係が早急に「草薙さん批判」をしてくれる事を望みます。

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定額給付金問題を取り上げる予定でしたが、それ以上に重要な話だったのでこちらを優先しました。


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