2009-01-16
時期は逸した。
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さて、定額給付金問題。
自民の味方という訳でもないので、こちらも批判してみようと思う。
『定額給付金には「負」の面もある』というのは第1回で述べたとおりだ。
定額給付金という戦術は、本来、「資本を広範囲に投下(絨毯爆撃)し、それぞれが小規模ながらに動き始める事によって全体の経済回復を図る」というプランだ。
これは「緩やかな経済回復」を狙っているのだが、平常時や初期状況であれば問題ないが、今現在、これだけ急激に経済が悪化し深刻化している状況では、効果の程は極めて低いだろう。
端的に言えば、すでに「広範囲投下では回復できない状況」であり、時期を逸しているという事だ。
もし、この局面で「広範囲投下」で回復を図るとしたら、もっと激しい投下・激しい絨毯爆撃が必要だろう。即ち、給付金としては最低3万円、できれば5万円クラスからの投下が必要だろう。
この事については「今回を契機にして、順繰りに数度に渡り小規模ずつ給付し全体回復を狙う」という意見もあるかもしれない。だが、それは「戦力の逐次投入」という方法であり、戦術論としては愚策として一般に言われる方法だ。
戦術論としては「短期に運用し短期に回復を図る」。これが基本原則だ。
その視点からすれば今回の「定額給付金」は初期状況としてはベストの策だった。
ただし、これがベストだったのは「年末前・クリスマス前」まで。それ以降は、無駄な戦力投下となり「無駄な戦力浪費」だ。
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この事を「戦術論」として言うと理解でき無い人がいるかもしれないので、「火事と消火作業」という例で考えてみよう。
・1のボヤが10箇所あり、水が10杯ある。
・ボヤは放っておくと、2、3、4と威力が大きくなる。
・1の威力について消火に1の水が必要になる。
・『このボヤは放っておくと、街中が大火事』になるというのは、全員が認識している。
・一度撒いた水は「火−水」の残部のみ回収できる。
この状況下で鎮火させるには「10箇所同時に水を1ずつ撒き、一気に消す」というのが解決策として一番の方法だろう。
これが「全体投下」の考え方で「定額給付金」の考え方といえる。
一方、もしこの時、集中投下をしたとする。
例えば「2箇所に5ずつ水を撒き、順次鎮火させる」とする。
この時、1回目の消火段階では「ボヤが8残り、水は8回収できる」事になる。
ここまではよいのだが、問題は2回目以降に現われる。
「ボヤは拡大・威力が増す」という原則に基づいて考えれば、2回目の段階では、
「2の威力の火が8カ所、水8杯」という状況になる。
この後、同様に2回目の投下を行った場合「2箇所に4ずつ水を撒く」事になる。
結果は「残り火災6箇所・水4回収」。
以後、『どうやっても「火災箇所は残る」』(完全消火は不可能)となる。
これが他のプランである集中投下の効果である。
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したがって、もし「全体の消火」を望むのであれば、「初期状況において速やかに全体投下をし、全体を一気に消火すべし」という事になる。
ただ、『すでに延焼が始まり一つ辺りのボヤが「2」に拡大した』後では、1の水をそれぞれ撒いたところで「すべての火が鎮火不可能」になる。
本来、「常に絶対有効」の戦術は存在しない。
「時間」と「状況変化」を頭に入れて、常に複数の戦術の中から最適な戦術を練る必要がある。
その視点からすれば、「定額金給付」は「初期状況」では非常に価値があったのだが「拡大した現状」では無駄といえる。
これが、定額給付金の『現状』だ。
したがって、今では、定額給付金は思ったような効果はでず無駄な資本投下になると私は考える。今、本当に必要なのは、初期の考え「全体消火」を諦め「集中投下による部分消火」に努める事だろう。
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